中国が農作物の増産や自然災害に強い品種改良などに役立てようと、植物へのゲノム編集の応用にも力を入れている。 中国科学院上海植物ストレス研究センターは5月、ゲノム編集を用いて植物のシロイヌナズナの遺伝子を自在に改変できる技術を確立した、と発表した。応用が進めば、少ない水で育つ穀物や色や大きさを好みに調整した野菜など、「デザイナー植物」の開発につながる成果という。 研究の中心になったのは同センターの准教授で日本人の三木大介。三木は日本で博士号を取得し、米国や欧州などで研究。米国時代の上司が上海で新たに研究所を立ち上げたのをきっかけに、研究の場を中国に移した。 今回、三木らのグループはアブラナの仲間のシロイヌナズナを使って実験した。栽培が簡単でゲノムのサイズが小さいことなどからモデル植物として研究に広く使われている。 これまで、シロイヌナズナなどの高等植物では、特定の遺伝子を狙って編集するのは難しかった。研究グループは、ゲノム編集技術の「クリスパー・キャス9」と、独自開発した「連続形質転換法」を組み合わせて、シロイヌナズナの特定の遺伝子に、緑色蛍光たんぱく質(GFP)の遺伝子を加えることに成功。GFPを加えても、本来の遺伝子の機能は失われなかった。 三木によると、これまで遺伝子の組み込みが成功する精度は「1%未満」だったが、5~8%という「高い確率」で、編集できるようになったという。今後20%ほどに精度を高めて、農作物への応用につなげたいという。 三木は「中国政府は農作物の研究に力を入れていて、この分野は研究費がつきやすい」とし、「やせた土地でも育てることができたり、冷害や塩害などにも耐えたりする農作物作りにつなげたい」と話した。=敬称略(上海=戸田政考)