青森県つがる市の国道で9月に4人が死亡した多重事故で、発生から1カ月間、被害者が飲酒運転をしていたかのような誤った情報がインターネット上で出回り、遺族らはいわれのない中傷に苦しめられた。TBS系の青森テレビ(ATV、青森市)の報道が一因で、22日の容疑者逮捕を受け、ATVは誤報を認め、番組で謝罪した。遺族への謝罪にも出向いている、という。 「なんであんな情報が出てきたのか」。事故で犠牲となった広船淳(じゅん)さん(43)と愛莉さん(30)夫婦の親族の女性は、容疑者が逮捕され、ATVが番組で謝罪した翌日の23日、そう言って首をかしげた。 ATVの小山内悟総務局長は24日、朝日新聞の取材に対し、「結果的に遺族の心を傷つけたことは申し訳なく、おわびします」と話した。 ATVは事故3日後の9月25日のニュースで、事故に関わった4台のうち「最初に衝突したとみられる2台の軽乗用車のどちらかの運転手が、酒気帯びだった可能性がある」と報じた。 当時、最初に衝突したと見られていたのは広船さんの軽乗用車と、山田春治(はるじ)さん(63)=死亡=の軽乗用車だった。 この放送直後から地元の話題を取り上げるネットの掲示板では、広船さんと、同乗して亡くなった愛莉さんを「暴走飲酒夫婦」「夫婦の遺族さらせ」などと中傷する書き込みが相次いだ。山田さんは運転代行の業務中だったため、飲酒運転するなら広船さんの方だと考えられたとみられる。 こうした情報に触れた広船さんの別の遺族は、「誤解を生む報道。みんなあり得ないと怒っている」と悔しさをにじませた。広船さんの上司(42)によれば、広船さんは事故当日の9月22日、発生約1時間前の午前0時ごろまで勤務先で遅番についていた。上司は「妻を迎えに自宅まで戻り酒を飲んでから出かけるとは思えなかった」と話す。 県警は、事故は広船さんの後方を走る乗用車が飲酒運転で暴走し、他の車に次々と衝突したことが原因とみて、今月22日、運転者の高杉祐弥容疑者(32)を自動車運転死傷処罰法違反(危険運転致死傷)容疑で逮捕した。これを受けてATVは、同日夕方のニュースで9月25日の放送が誤報と初めて認め、番組内でアナウンサーが「おわびして訂正します。失礼いたしました」と謝罪した。 広船さん夫婦の親族の女性は、「容疑者が逮捕され、もやもやは少し晴れた」と言いつつ、こう続けた。「でも、亡くなった2人はもう戻ってこない」(板倉大地、仲川明里、中野浩至)