2008年にノーベル化学賞を受賞した名古屋大学特別教授で、米ウッズホール海洋生物学研究所・元上席研究員の下村脩(しもむら・おさむ)さんが19日朝、老衰のため長崎市内で死去した。90歳だった。故人の遺志で葬儀は近親者だけで行った。親族らが21日、明らかにした。 親族や関係者によると、昨年末から体調を崩し、自宅のある米国から帰国して長崎市内で療養していたという。 下村さんは、米プリンストン大の研究員だった1960年代、クラゲの一種オワンクラゲが光る仕組みを解き明かし、緑色蛍光たんぱく質(GFP)を発見。それから30年たって、別の研究者が細胞内で動く分子にくっつけて追跡する「目印」としての利用法を開発し、GFPは病気や生命の仕組みを解き明かす研究に欠かせない道具になった。この業績で06年度の朝日賞を受賞。80歳でノーベル賞を受賞した。 1928年、京都府福知山市で生まれた。51年、長崎医科大付属薬学専門部(現長崎大学薬学部)を卒業後、名古屋大理学部の故平田義正名誉教授の研究室に入り、生物発光の研究をはじめた。57年にウミホタルの発光物質の精製・結晶化に世界で初めて成功。業績が評価され、フルブライト奨学生として渡米した。その後、米プリンストン大上席研究員やボストン大名誉教授に。ノーベル賞受賞後には、長崎大名誉博士にもなった。 終戦を疎開先の長崎県諫早市で迎え、原爆投下時は、海軍の軍需工場に動員されていて、放射性物質を含む「黒い雨」を浴びた。ノーベル賞の受賞講演では、原爆投下など多くを戦争体験の紹介に割いた。折に触れ、原爆投下を厳しく批判するなど、核兵器廃絶を強く訴えた。